『Die Liebe der Erika Ewald』の続き
『Die Liebe der Erika Ewald』ーErika Ewaldの恋。
Zweigの小説の中ではかなり初期の作品で、1904年に発表されている。
小説の中の春のウィーンは田園詩と19世紀末の都会の美しさを兼ねていて、
そしてErika Ewaldという名の少女の初恋も半分はこの景色に恋をしているようなものだった。
あ、そこが好き。
ストーリーを要約すると、若いピアニストのErikaが、
ある日魅力的なバイオリニストの男性と出会い、
恋人になったが体の関係に踏み込もうとした夜にErikaがパニックになって逃げてしまった。
時が経ってやはりその男性のことが好きだと気づき、
彼のコンサートを見に行くが、、彼は他の女性とイチャイチャ?していてErikaのことを見たら
冷ややかな笑みを見せてさらにイチャイチャしていく〜っていう話。( ̄▽ ̄;)
その後の話は、Zweigの処理としては
Erikaはそのショックで何事でも穏やかに受け入れる性格になって、
ピアノの世界に没頭するold maidになるとされているが、
え〜〜〜気になるな〜
どう考えても続きありそうなんだよなぁ。
そんな一回の失恋で、人はそこまで変わるかな?
Erikaには他の恋もやってくると思うし、その男性ともまだ終わってない気がする。
大体その男性こそ伸びしろありすぎでしょ。。
設定では恋愛経験豊富とされてるけど、Erikaが逃げていった後
男性から手紙1通も届かず、連絡を絶ったのが不思議。
当時のシチュエーションは、急に用事を思い出した可能性もあるし、
具合悪くなった可能性もあるでしょう。。
Erikaがまだ男性経験0なのも考えたら、そこを優しく受け止めてもいいんじゃない?
そうしないのが、この小説の面白さ。そうできない二人なんだと思う。
音楽を愛する二人は、とても繊細な感情の持ち主で誠実で、
会話の内容には慎重で、上面の会話をするくらいなら黙る。
その沈黙の価値を知っている。(Zweigはこれを、深い教養からきてるとしてるけど、まぁ)
デートはあえてPraterに行かないで、(心に刺さる)
田舎のビストロで流行りの曲の演奏を聴いたときに、
Erikaの耳を汚したくないとでも言ってるように、早めにお店を出たり。
おまけに男性の方はおそらくプライドが高くて、
今まで付き合った女性の中でもErikaのことを一番特別に思ってるからこそ
Erikaの弱さや乙女心をわかっていなかったんだと思う。
5〜10年経てばわかるでしょう。(ちなみに1904年のZweigはまだ23歳。。)
成長した彼はErikaのこと思い出して、後悔もあるでしょう。
1904年前後のウィーンの人口は、約170万。
(出典:https://ww1.habsburger.net/en/chapters/metropolis-melting-pot-i-vienna-migration-under-emperor)
今の東京の10分の1で、ちょうどうちの地元と同じくらい。
この二人は、家は歩いて行けるような距離だけど、Erikaは活動範囲狭そう。
ピアノを教える生徒によっては引っ越すこともあると思う。
出くわす確率はなんとも言えない。
でもでも、元々ピアノの生徒の家族を通じて知り合った二人は、
そのうちにどっかのパーティーで出くわさないかな?
Erikaはとても控えめだけど、その後の人生でも彼に会いたがってたし。
彼がいるのを知っててもパーティーにはいくでしょう。
会った時に、15分でも経てば、彼は彼女の苦しい愛情には気づくでしょう。
1904年のZweigには予想できなかったけど、10年後にはWW1が待ってる。
当時のオーストリアの徴兵制度は知らないけど、
男性が徴兵されることもありうえそう。(35歳くらいで)
まぁこの人は35になったらもう結婚してると思う。
WW2も終われば、この男性が生きてる確率は40%以下だと思う。
特に戦時に出くわしたら、どうなるんだろう。
彼の家に訪れるたびに、「書斎に通してくれて、春の上着を受け取ってErikaの手の甲にキスして
机の隣の小さなvelvetのソファに一緒に座る」彼だったが、
戦時は髪型もスーツもすごいことになりそう。
できるならErikaに見られたくなかったでしょう。
でも出くわしたら、きっとErikaが前より強い女性になってることに気づくと思う。
30代に、同じshelterで希望を無くしたウィーン市民の前でまたセッションをやったらいい話だよね。
まぁでも、Erikaには他にも素敵な出会いがたくさん待ってると思う。
Erikaの心の中の美しい景色は、続くよ。